作品集

すべては海になる書評

毎日新聞書評に!

「すべては海になる」の書評が2月5日(日)の毎日新聞に載りました!
評者は、作家の大岡玲さんです。

今週の本棚・新刊:『すべては海になる』=山田あかね・著
(小学館・1470円)

束の間の肉体的な関係にのみ冷えた落ち着きを見いだす、「愛のわからない」二十七歳の女性書店員。誇りを砕かれたインテリの父、その父の暴虐に怯え盗癖に溺れる母、非行に走る妹といった「崩壊家庭」の中で、必死に真面目さにとどまろうとする高校生の少年。この書店員と少年の間に心の交流が生まれ……。

と書くと、今や書店に山積みの「癒し」や「救い」に満ちたステレオタイプの恋愛物語を想像するかもしれない。だが、この小説は、そうした現代の月並みに反抗しつつ、不器用なほど真摯に人間の弱さ、よるべなさ、簡単には回復しない魂のよじれを描く。その上で、ひどく強靱で楽天的でもある精神の勁(つよ)さと真面目な愛に到達しようと試みる。つまり、まっとうな愛の物語。(玲)

毎日新聞 2006年2月5日 東京朝刊

本の雑誌にも!!

「本の雑誌」2006年2月号の「今月の一冊」にも選ばれました!!

「本の雑誌」2006年2月号

傑作の予感?

目利きが選ぶ今週の三冊 文芸評論家 北上次郎
27歳の独身書店員と高校2年の少年の不思議な交流を描く物語。まだ、もどかしいが、この向こうに傑作が待っているとの予感がある。次作に期待したい。

(☆3つ)

ご感想

感想ファイル1・・・メールにて拝受
もうすぐ、結婚を控えた男より

早速ブックファーストですごく目立つところにあった
「すべては海になる」拝読いたしました。

まもなく結婚という制度にのっかってみようとする身に
とりましてはなかなかに刺激的なお話でしたが、
主人公の女性をはじめ、それぞれの人間の
どうしようもなさが誠実に描かれており、
昨今巷を賑わすありきたりな物語などではない、
「ほんとうのこと」を描いた優れた「小説」であると思いました。

(ラスト近く、夏樹の部屋で2人が一線を越えないところ、いいですね。
少年はやや理想化されている気がしましたけれども・・・
ちょっと立派ですね。彼の言動。
情けない僕だったら、あそこまでうまく言葉にできず、
夏樹が寝た後にそっとベッドルーム覗いちゃいます・・・)

面白かったと同時に女「性」を垣間見た感じで、
これは比較的純な物語を生きている(と僕が思っているだけかも知れませんが)
××(彼のGF)に読ませてよいものやら。

(テレビディレクター/31歳/男)

感想ファイル2
涙なしの感動。

ご本、読ませていただきました。××の書店で買いました。平積みされ、立てて置かれ、大変目立っておりました!

私は、「すべては海になる」の余韻を引きずりっぱなしです。こんな気持ちになったのは、初めてです。きっとプロの方は読者を泣かせるのはかんたんで、その延長に”感動”を思わせる本が売れているのかもしれません。

でも、山田さんはありのままの世界を小手先の技術を使わずに、きれい事で片づけず、まっすぐ書いておられると感じます。格好いいです。初めて、涙なしで感動しました。この小説が私は大好きです。出会えて本当に良かったです。

(編集者/女性/28歳)

感想ファイル3・・・メールにて拝受
大学助教授のご意見

小説読ませていただきました。

うまいもんだなあと、まず思いましたね。もう(当たり前だけど)、すっかりプロフェッショナルの域ですね。いつも思っているようなことが、ちゃんとしたストーリーになっているところが、えらい(なんてのじゃ褒めてることになりませんね)。この前いくつか気がついたような、細かい語句の点でも、今回はひとつもありませんでした。

月曜に受け取って火曜日に一瞬にして読みました(本一冊一日で読むの何年ぶりだろう)。あえて言えば、ほんとに些細なことですが、ああいうシチュエイションで高校生に名刺渡すだろうか、携帯電話の番号書きそえるだろうか、などと思いはいたしました。あ、あと、高校生にしてはずいぶん大人びているなとも思いましたが、ま、これは多分しょうがないことですよね。
で、いやあ面白かったです、って感想をすぐに送ろうと思ったんですが、それじゃあんまり芸がないし(芸なんてなくてもいいんですけど)、二三日したらどう思うだろうかちょっと待ってみました。

ま、基本的には変わらないんですけど、なんと言いますか、高校生のイノセンスが絶対善として扱われているような気がしてきました。こっちの世界はいろいろあって大変だと、作者はわかってる。あっちの世界について、しかし作者は何を知っているのだろうか、と。

作者が言語的にそっちの世界を肯定しちゃうってのはもちろん山田さんの敢えてするところではないのでしょうし、それは当然なのだと思いますけれど、なんと言うのかなあ、そっちの世界が、(う。前のにも同じようなこと書きました。つくづく同じことばかりしか考えられないのだなあ)ある程度相対化されているように見えた方が、奥が深いような印象を与えたのではないかと思います。
あるいは、こっちの世界とそっちの世界がもっと平等に扱われていた方がよかった、と言うべきか。などと書きはしても、じゃあ具体的にどうすればよいのだということになると、わからないんですけれど。
しかしこの点に関しては(十分予想される)反論をお待ちします。

私の好みとしては、小説内小説(?)がもっと外の部分と密接に関係づけられていた方が好きです。枠にかこまれたところを読むのって、外のことを忘れちゃいけないのだから、負荷が大きいですよね。その負荷に値するくらいには、ということです。もっとも、小説家本人が登場することで報われているとは言えますけれど(うまいよなあ)。

きっと前のより多くの読者を獲得するのではないかと思いますが、今のところはいかがでしょう?

××も、いいですね。しかし、今の人は全然読んでる気配もないわけだから、今の日本での作家の寿命は、たかだか30年くらいということなのかも知れません。

全然関係ないですが、日本で××をちゃんと研究してる人、一人か二人じゃないかと思います。訴えられたりして。

(大学助教授/40歳/男性)

感想ファイル4・・・メールにて拝受
ロシア文学仲間はこう見る。

夏樹と光治は、お互いが危機にあったときにちょうど自分と似た人に出会えてラッキーだったんだなーというのが全体の感想です。

たぶん二人とも自分の生き方を変えようとは思っていない。それまでに苦労して苦労して立て直してきたものだから。
だから、彼らに必要だったのは「その道を行け!」と強く背中を押されることだけだったのでは。
ほかの人が歩いている道ではないから、進み続けることに迷いが出てきちゃうのでしょうね。他者の抵抗も大きいし。
出会って、互いの存在にょって、確信をもって自分の道を進めるようになって、よかったなーと思います。
「進め!」というのは(そして実際に突き進むのも)、たいへん気持ちがいいです。
昔、性格診断で「決断力:5点」「状況判断力:1点」(5段階評価)という素晴らしい結果を受け取った私です。
「進め!」「とにかく進め!」「トラブったら考えろ!」「場合によっては考えなくてもよし!」というのが大好きです。

夏樹さんや光治くんはちゃんとした人たちなので、ちゃんと考えて、あるいは考えようとしているところが偉いと思います。 このあと二人はどうなるんでしょうね。

夏樹さんはSMの女王様をやってみてはいかがでしょう。
男の存在に依存しつつも、その場のシチュエーション的には自分が君臨する、というのはバランスをとりやすいのでは。
SMはよく知りませんが、SもMも同根、という耳知識だけで思いつきました。
夏樹さん言葉責めは得意そうだし。

光治くんは就職するのかしら、進学するのかしら。
就職するなら、鉄工所で難しいNC旋盤とか(うろ覚えです)を操る仕事をして、鉄と語り合ってほしいです。
というのは、ちょっと前に読んだ「鉄を削る」という本の影響です。
町工場の最先端っぷりにハマれば、精神生活において人間関係が占める割合がぐぐっと下がるのでおすすめ。

と、じっさい面と向かってはとうてい言えないようなアドバイスを虚構のお2人に並べてみました。
自分が世界を覗く窓がいかに小さいかを思い知りました・・・。
えー、興奮して長々とすみません。

(CG屋/女性/30代)

感想ファイル5・・・メールにて拝受
CMのプロのご意見

「すべては海になる」のご本、ありがとうございました。
「ベイビーシャワー」以上に、大変面白く読みました。

エンコウしてたという主人公も、品よく好感もてました。
少年が格好良すぎる感じもするけど、薫くんですもんね。

文章はどんどん上手くなっているのではないでしょうか。
少なくとも、僕は一気読みでした。

ロマンチック・セクシー・ラブコメ、作りましょう。

(CM制作会社社長/男性/47歳)